公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です
本日は当クリニックにおいても、ご相談を受ける機会が多い疾患の一つでもあるADHDについてのお話です。この十数年の間で、ADHDをはじめとした「発達障害」といわれる障害が一般的にも知られるようになってきました。数年前からは大人の発達障害といった表現が用いれられるようになり、メディアにも取り上げられ、数多くの書籍も出版されています。
ADHDとは、発達障害の一つで、「不注意」と「多動、衝動」という特徴を持つ、先天的な疾患と考えられています。本日は、「不注意」と呼ばれる特徴について取り上げたいと思います。
不注意の症状
・些細なミスをしてしまう
・課題や活動の最中に注意を持続することができない
・課題や活動を順序立てて取り組んだり、優先順位をつけながら進めることが苦手
・忘れもの、失くしものが多い
・話しかけても聞いていないように見える
・他の刺激で注意がそれ易い
・スケジュールを忘れてしまったり、時間を計算して動くことが苦手
小学~中学時代では特に身の回りのものの管理に苦手さが生じます。忘れ物が多かったり、よく物を失くしてしまったり、プリントを親に見せたり期限に間に合うように提出ことが苦手であったりします。一見、そんな問題はなかったという場合にも、周囲の大人が常に声掛けをしていたので防げていたということや学校に置いていっていたという対応により問題にならなかったということもあります。整理整頓も苦手なため、カバンの中や机がぐちゃぐちゃになってしまうこともよくみられる特徴です。時間の管理が苦手で、学校に間に合わない、友達との待ち合わせに遅れてしまうといったこともみられます。
高校~大学時代でも同様に身の回りのものの管理が苦手であることが続きます。ただ、置いていくということが増える年代でもあり、忘れ物などはあまり目立たなくなることもあります。このころからは貴重品を持ち歩くことも増えます。それに伴い、貴重品の紛失やどこに置いたかわからなくなるといったことが増え始めます。大学ではレポート課題が増えるため、締め切りをうまく管理できないといった悩みがでることもあります。また、この年代では単身生活がスタートする人もいます。単身生活では整理整頓ができずに部屋が散らかってしまったり、ゴミ出しを忘れてしまい、部屋にゴミが溜まってしまうといった問題もよく聞かれます。
成人期以降では、職場でいくつかの業務を頼まれても同時に処理していけなかったり、何度教えられても覚えられない、ケアレスミスがよく起こる、会社に遅刻してしまうといった問題がよく聞かれます。学生のときまでは気づかなかったが就労し始めることで困難に初めて気が付くという人もいらっしゃいます。家庭の中では、整頓が難しいことや手際よく料理を作るなど、段取りを組むことが難しいといった問題がみられます。
それぞれの年代に応じて記載した内容は、その時期だけに限らず一貫して持続するということもあります。また、何らかの工夫で特徴はあるのだけど、問題は生じていないという場合もあります。忘れっぽいからADHDということにも、もちろんなりません。幼少期からのエピソードを丁寧に聴取し、特徴の有無や生活への支障を総合的に判断して診断されます。
そのような判断の結果、ADHDという診断となれば、その後どのような治療を行っていくかを相談していきます。ADHDには治療薬があるので、薬物療法を行うかどうかといった検討を進めていくことになります。また、日常的な工夫を増やし、自身の特徴をどう補っていくか、ということも併せて考えていくことが基本的な治療方針となります。
いくら言われても、何度言われても、どうしても忘れてしまう・どれだけ気をつけても失くしてしまう・どれだけ注意を払っても何かミスしてしまっている等々、もしかするとそれはADHDの特徴かもしれません。医療機関への相談を検討してみるとよいかもしれません。
次回は、多動・衝動についてお話したいと思います。