抗うつ薬の使い分け 副作用について、ご説明します【1】

抗うつ薬の使い分け 副作用について、非常にわかりやすくご説明したいと思います。

普段の診察で、頻回にご説明する内容について、お話したいと思います^^

まず、抗うつ薬の重要な役割は、うつ病に対しての治療であります。

また、うつ病だけでなく、

不安障害 ②パニック障害 ③社交不安障害 ④強迫性障害 ⑤PTSD(心的外傷後ストレス障害) ⑥PMS(月経前症候群)・PMDD(月経前気分障害)等にも非常に効果があります。

以前にもお話しましたが、抗うつ薬にも数多くの種類があります。

最近、治療の主流になっているのは、

◎SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

◎SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。

SSRIは、脳内伝達物質(脳内ホルモン)であるセロトニンの活性を向上します。SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンの活性を向上する薬剤です。

うつ病の治療には、SSRIやSNRIを使用することが一般的です。

「どちらが有効性が高いのか?」については論文でもいろいろな意見があり、まだ、はっきりとしない部分もありますが、

印象としては、うつ病の治療に関してはSNRIのほうが、セロトニンとノルアドレナリンの両方の活性を賦活するため、より治療効果を望める可能性があると思います。特にデュロキセチン ベンラファキシンは効果があると考えられます。

また、疼痛が強い場合はデュロキセチンが非常に有効であります。最近では、精神科医よりも整形外科の医師から、慢性疼痛に対して処方されることが多くなってきました。

イメージとしては、うつ病にはSNRIを。頭痛や疼痛を伴ううつ病にはデュロキセチンが良いと考えております。(もちろんSSRIでも効果がある場合もあります^^)

さて、上記しました①-⑥のパニック障害 社交不安障害 強迫性障害 PTSD(心的外傷後ストレス障害) PMS(月経前症候群)・PMDD(月経前気分障害)は、結論から申し上げればSSRIが圧倒的に効果があると思います。

SSRIのなかでも20年前くらい前は、パロキセチンが大流行した時代もありました。理由はよく効くからです。しかし、抗コリン作用が強く便秘・口渇・消化器症状・排尿困難などの副作用が出やすいことと、止める時に離脱症状が強くて苦労する方も沢山おられましたので、現在では徐々に使用する頻度は少なくなってきております。

現在は、エスシタロプラム セルトラリン ボルチオキセチン(SSRIの改良版でセロトニン取り込み阻害・セロトニン受容体調節剤と呼ばれてます)を処方することが臨床では多くなってきました。

ただし両方とも、共通する有名な副作用として、

(1)服薬してから2~3週間くらいまで胃腸のムカムカや吐気などの消化器症状が出現することが割とあります。この場合、空腹時を避けて食後に胃の中に食べたのもが残っている内に、多めの水で服薬してもらえれば軽減します。

それでも消化器症状が辛い場合には、胃薬を併用すると消化器症状は軽減します。もともと胃腸が弱い方は出やすい傾向がありますので、胃薬と併用することをお勧めします。

徐々にお薬が身体に馴染んでくると、胃薬なしでもムカムカや吐気はなくなってきますので、いずれ胃薬は止めることができます。

(2)また、若年者・未成年者に多いのですが、精神が賦活され過ぎてアクチベーション症候群(イライラや衝動性 怒りっぽさ 不安 焦燥等)が起きることがあります。そのような症状が出現したら直ちに中止することが必要となります。これは、かなり頻度は少ないですが、しばらく注意深く経過観察が必要になります。その他、セロトニン症候群や肝機能障害などもまれにあります。

以上、SSRIとSNRIについて、分かりやすくお話ししました^^

次回は、3環系と4環系、NaSSAを中心にお話ししたいと思います(*^-^*)

札幌 西区 琴似

精神科 心療内科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫

 

 

 

 

 

社交不安障害について② 

社交不安障害を理解するため重要なポイントですが、大勢の人前でスピーチやプレゼンテーションするのが苦手で、多少の緊張をするのは異常ではありません。

しかし、対人不安・対人緊張が強すぎて、まともにスピーチやプレゼンが出来ないならば、これは「日常生活に支障が生じている」ため、治療が必要となり得ます。

更に問題となるのは、1対1の関係にも支障をきたすことです。特に、そんなに親しくないけど、まんざら知らない関係でもない中間的な心理的距離感の人に、ハッキリと自分自身の意見を言えないことです。人から頼まれたら断れなかったり、人と違う意見を言うことができなかったり、異性になかなか声をかけられなかったりします。周囲の人からは、何を頼んでも断らない「良い人」に見えますが、ご本人は内心、疲れ果て限界に達しているのに、それでも断れないのです。最終的には仕事や学校に行けなくなるなど、困った事態に至ります。
そういう方が、最も苦手とするのは、実は同僚や同級生です。今後、「長く付き合っていかないといけない」「嫌われたら困る」と考えて、更に何も言えなってしまいます。

原因:他の精神疾患と同じく、まだはっきり解明されてませんが、生まれ持った気質(性格や性質)と脳内の扁桃体の過敏性に関連があると言われてます。

治療:他の不安障害と同じように、抗うつ作用と抗不安作用を持つ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や抗不安薬の薬物療法が有効です。

SSRIの効果が出現するまで、1~2週間かかりますので、1、2回服薬して、効果がないと思い込んで自己中断しない様にしてください。抗不安薬は即効性がありますのでSSRIの効果が現れるまでの間に使用します。抗不安薬は依存性が問題になる場合もありますので、可能な限り最少用量・最少期間だけ用いることが望ましいです。
今まで、他の疾患でも何回かご説明してきましたが、ここでも認知行動療法を用いて、認知(考え方)のゆがみを修正することで問題を解決が可能となります。不安や恐怖に直面しても、上手くやり過ごせるスキルを習得していく精神療法です。

精神療法(認知行動療法を含む等)と薬物療法は治療の両輪とお考えください。そして皆様がメンタル的な、お悩みから解放されるお手伝いができれば、幸いだと思っております(*^^*)

社交不安障害について、最後までご清聴ありがとうございましたm(_ _)m

次回は、統合失調症についてお話したいと思います。

札幌 西区 琴似

心療内科 精神科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫

 

 

 

社交不安障害について①

社交不安障害(SAD)について2回に分けて、お話したいと思います。

人に注目されることや人前で話をすることに強い不安を感じて、恥ずかしい思いをすることが怖くなってしまい、人が多くいる場所(電車 バス 繁華街など)に出かけることにも、強い苦痛を伴います。そして日常生活に支障を来たす状況になれば、社交不安障害といいます。対人恐怖や赤面恐怖も含まれます。怖さのあまりパニック発作を起こす場合もあります。失敗や恥ずかしい思いがきっかけになることも多いのですが、思春期の頃は、自分で自分の価値を認められなかったり自分に自信がもてなかったりすることから起きてくる場合も多くあります。

社交不安障害では、自分でも、そんなふうに恐怖を感じるのは変だなとわかってはいますけれど、その気持ちを抑えることが難しくなります。徐々に、恐怖を我慢しながら生活したり、外出や人と会うこと(怖いと感じること)を避けるようになったりします。

 

では、次回2回目に続きます。ご清聴ありがとうございました^^

本日は、本当に冷えました。インフルエンザが流行ってくる季節も近づいてますので、お早めのワクチン接種をお勧めします。

札幌 西区 琴似  二十四軒

心療内科 精神科

院長 阿部 多樹夫