臨床心理士資格を更新します

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

前回、「心理療法を受けるには?」というお話をさせていただき、公認心理師や臨床心理士という資格についてお話しました。どちらも一定の教育を受けていることが担保されている資格としてご紹介させていただきましたが、今回は臨床心理士のお話です。

先日、臨床心理士の更新書類が届きました。今回で3回目の更新となります。臨床心理士は5年に一度、更新を行う必要がある資格です。公認心理師は一度取得すると、更新という制度はありません。しかし、臨床心理士は更新を行う必要があります。

この臨床心理士の更新に重要な点はポイントの取得です。協会が認定する研修会、各都道府県の臨床心理士会が主催する研修会、学会参加、個別に認定された研修会への参加、論文の投稿、スーパーバイズなどいくつかの領域が設定されており、そのうちから3つの領域でポイントを取得しなければなりません。

研修会や学会では参加することで2ポイント、講演や発表であると4ポイントというようにポイントが定められています。また、2ポイントの取得には協会が指定する時間以上の研修会でなくてはならないといった定めもあります。ここ数年は感染予防の観点から多くの研修会がオンラインでの開催となり、オンラインの場合は1ポイントという定めになっておりました。

このような定めのもと、15ポイント以上を得ていなければ、臨床心理士の資格更新はできません。5年かけて、せっせと研修会や学会に参加しながらポイントを貯めていくことになります。

すでに3度目の更新ということもあり、書類準備の方はすでに整いつつあります。後は事務手数料を納め、顔写真を撮影すれば郵送でき、無事に更新ができそうです。

1度目の更新では先程もご紹介したポイントで苦労しました。3つ以上の領域でポイントの取得をしていたのですが、研修会の参加を証明する書類の管理がずさんであったため、参加証や領収証を探し出すことに苦労した覚えがあります。

2度目の更新では5年間に参加した研修や学会に関する証明書をファイリングし、ポイント取得の証明は滞りなく終えられました。特に問題がないと思われた更新でしたが、証明写真でちょっとした失敗が起きました。冬、外に設置された証明写真を利用したのですが、どうやら画面が吐いた息で曇ってしまっていたようなのです。出来上がった写真は白くモヤのかかったような仕上がりで・・・。そのまま利用したところ、ずいぶんと古い写真を使ったかのような資格カードが郵送されてきました。臨床心理士の資格カードには運転免許証のように顔写真が載ります。

今回は書類も写真も問題なく準備が整えられそうです。写真はこれからですが、曇らないように細心の注意を払って臨もうと思います。

これで、無事更新できれば、5年間臨床心理士として活動できます。その間も、研修会や学会参加など研鑽を積むことが必要となりますが、それは当然のこととして、今後も励んでいきたいと思います。ひとまず、無事に更新ができそうで安心しております。

提出の締め切りを過ぎるというミスが起きないように最後まで用心してかかりたいと思います。

心理療法を利用したいがどうすれば?

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

今回は「心理療法を受けるには?」というお話をしたいと思います。クリニックにもたびたびお問い合わせいただくことがありますが、「カウンセリングは受けられますか?」という質問に関して、クリニックを含んだ医療機関では「受けられると保証できない」という回答になってしまいます。

心理師/士を配置している医療機関かどうか、という点ももちろんありますが、所属しているという機関であっても、問い合わせ時点では、保証できないという回答になってしまいます。これは医療機関で行われる心理療法は医師の指示によって始められるためで、希望すれば受けられるというわけではないことという意味です。病状等を勘案し、心理療法が適用となる、あるいはその方法が効果的といった判断を医師がすることで、心理療法は開始されます。

適用となるかどうかは、相談したい内容や疾患の重症度、心理療法による治療効果が示されている疾患かどうかといった基準に加えて、医療機関ごとの基準による場合もあります。当クリニックでは、公認心理師による心理療法は治療の補助として利用しており、薬物療法に併せて行う治療方法という位置づけで行っており、心理療法のみの治療は行っておりません。

このような理由から、心理師/士がいる機関であっても必ずカウンセリングが受けられるとは言えません。もちろん、希望は考慮されますが、保証はできないということになります。では、どうしてもカウンセリングを受けてみたいという場合はどうすれば?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

とにかく心理師/士によるカウンセリングを受けたい、利用したいという場合には、①個人で開設しているカウンセリングルームを利用する、②大学に付属する相談センターを利用するという方法があります。どちらの方法も医療機関ではないため、健康保険が利用できません。したがって、1回の相談料はその機関ごとで異なります。①に比べて②の場合には、教育機関であるという特色から、1回の相談料は低めに設定されている場合が多いです。ただし、時に学生の陪席があるなど、教育への協力が求められる場合があります(もちろんお断りすることも可能です。了承しなければ、利用できないという意味ではありません)。

インターネットなどで調べると様々なカウンセリングルームがあることがわかりますが、カウンセラーという名称も様々です。民間の資格など、多種多様に存在しています。医療機関で心理療法を提供している心理師は公認心理師あるいは臨床心理士であることがほとんどです。

臨床心理士は日本での歴史も古く、医療機関や教育機関など様々な領域で心理療法や心理検査といった業務に従事しています。「心理士」「カウンセラー」といった呼び方をしたときのほとんどは、この臨床心理士を指していると言っても過言ではないと思います。臨床心理士は国家資格ではなく、協会が認定する認定資格になります。協会のホームページでは、臨床心理士が所属している様々な機関を検索できるデータベースも提供されています。「臨床心理士に出会うには」と検索していただくと、ページが出てきます。

もう一つが公認心理師という資格です。これは国家資格であり、今後、特に医療機関では主流となっていくと思われます。まだ誕生して日が浅いことから、耳馴染みのない資格かもしれませんが、次第に心理師と言えば、公認心理師となっていくのではないかと思われます。ちなみに、臨床心理士と公認心理師は「し」の漢字が異なります。なので、「心理士」だと臨床心理士、「心理師」だと公認心理師ということになります。

現状、どちらの資格も保有している心理師/士が多いかと思います。どちらであっても、優劣という関係性ではありません。どちらかの資格を有している心理師/士であれば、一定の教育を受け、一定の技術が担保されているとお考えいただくとよいでしょう。どのカウンセラーが良いのかわからないというときには、ひとまずどちらかの資格を有しているかどうかを判断基準の一つとしていただくと良いと思います。

今年も残りあとわずかとなりました

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です。

本日で10月も終わり、今年も残すところあとわずかとなりました。紅葉も進み、道端の落ち葉も増え始めています。
朝や夜は寒さの厳しい日も増え始め、徐々に冬が近づいております。昨シーズンは大変な大雪で、多くの方が大変な思いをしましたね。今シーズンはそうならないことを祈る日々です。

寒さが徐々に厳しくなる中、今年は新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行も懸念されております。感染対策の徹底によるここ数年はインフルエンザの話題は耳にすることが減りましたが、やはり対策をしておくほうが良いようです。

例年通り、当クリニックおきましてもインフルエンザの予防接種を受け付けております。ただし、当クリニックの患者様およびその家族とさせていただいおります。また、中学生以上の方とさせていただいております。10月より接種を開始しております。

ワクチンのご予約はまだ若干名可能です。ご希望の方はクリニックにお問い合わせください。

頭が上手く働かない・・・、これって病気?

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です。

今日は、「頭が上手く働いていない」と感じる症状についてご紹介したいと思います。日常生活で、「なんだか今日はいつもより頭が働かないな」「今日はなんだか頭の回転がにぶいな」と感じることはあるものです。疲労であったり、睡眠不足であったり、昨晩ついつい深酒してしまってなど、理由は色々と考えられます。

単に1日あるいはごく短い期間であれば、心配はありませんが、今回取り上げるのは、このような状態が続いてしまう場合についてです。

頭が働かない状態に最も関係が深いのは抑うつ気分です。気分が沈んだり、滅入ったりすることです。抑うつ気分が私達にもたらす影響の一つに、精神運動抑制と呼ばれる状態があります。この精神運動抑制というものが、「頭が上手く働かない」と感じる状態の正体です。

精神運動抑制では考えるスピードが非常に遅くなる、あるいは考えが止まるという体験をします。いくら考えようとしても、考えが進んでくれません。沼でもがいても前に全く進んでくれないのと同様に、考えが一向に進んでいきません。

優柔不断とは異なります。優柔不断では、結論は決められませんが、考えそのもののスピードは衰えず、ずっとどうしようか、とぐるぐる巡っていることになります。精神運動抑制ではそもそも考え自体のスピードが遅くなります。もちろん、結論は決められない状態にはなりますが、迷って決められないわけではないのです。迷うことすらできない状態といえます。

日常生活では、「新聞を読んでも頭に入ってこない」「食事の献立を考えようとしても何も浮かばない」「スケジュールを考えようとしても、段取りを全く考えられない」といった体験で気づくこともあるかもしれません。いつも考えていることが、いつものように考えられない、考えが進まなくなってしまいます。

先程も述べたように、頭が上手く働かない状態が数日という期間であれば心配はありません。しかし、ほとんど毎日にように感じ、それが2週間から1ヶ月にも及ぶという状態であれば、精神科や心療内科での相談を検討していただくと良いでしょう。気づかぬうちに、抑うつ気分が強く、大きくなり、治療が必要な状態になっているのかもしれません。

人前がとても苦痛になる疾患

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

今回は社交不安障害という疾患についてご紹介したいと思います。

例えば、

・たくさんの人を前に発表する
・会議でプレゼンテーションする
・飲み会で人と会話する
・授業中に手を挙げて発表する
・職場で何人かで雑談する

などなど

何か自分がアクションを起こすことで、自分自身に注目が集まりそうな場面で話したり、何らかのパフォーマンスをすることがとてつもなく苦痛であり、そのような状況では、非常に強い不安が生じ、動悸、息苦しい、発汗など身体的な変化が急激に生じるような場合もあります。そして、時にはそのような場面や状況に参加できない、避けてしまうという疾患です。

もちろん、上記のような場面で緊張する、苦手という方は多くいらっしゃると思います。苦手としているだけで、すぐに疾患ということにはなりません。引っ込み思案、口下手、シャイ、人見知り、など色々な言い方で、人と話したり何かパフォーマンスをすることの苦手さが表現されています。その全ての方ではありませんが、中には専門的な治療を必要とする方もいますしかし、単なる性格によるものと理解され治療を受けようとはしない方もいらっしゃるかもしれません。

また、その方の置かれている状況によっては、苦手でも問題はないということもあります。先ほど上げた例のように、人前で何かパフォーマンスをする機会というものも、遭遇する頻度は人それぞれです。リモートでの業務や授業も増えているので、昔は問題だったけど、今は問題ないということもあるでしょう。

コミュニケーションが苦手と感じることは一般にも広くみられることですし、苦手の中身も様々です。社交不安障害の場合、過度な緊張や不安により話せない、(何かが)できないという体験を繰り返します。なので、話題がみつからない、その場の空気が読めない、相手の言っていることがわからない、自分が何を言いたいのかわからないといった悩みとはやや異なります。

もちろん、このような悩みを含むこともありますが、基本的には過度な緊張や不安によりパフォーマンスに強い苦痛が生じる、あるいはできないという状態ですので、言いたいことがはっきりとしていたとしても、それを表現することができない状態となります。

病院に相談してもよいものなのか、と悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。人前でのパフォーマンスに感じる苦痛が日に日に増していると感じていたり、苦痛があまりにも大きかったり、そのような事態に陥ることを避けるために自身の活動を制限したり、ある場面を避けたりすることで、日常生活が送りにくくなっていたり、こういった場合には専門的な相談を検討していただくほうがよいでしょう。

治療により不安緊張が緩和されれば、これまでよりも生活が送りやすくなることもあるでしょう。心当たりのある方は一度ご相談を検討してみていただくとよいと思います。

食べられないことは精神にも影響します

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

本日、8月31日は「やさい」の日だそうです。今朝のニュースでも、高騰していたたまねぎの価格が北海道産の豊作により安くなり始めたこと、逆に葉物野菜は猛暑の影響で価格が上昇していると耳にしました。明日からは9月となりますが、食欲の秋というように食べ物がおいしい季節となります。今日は食事と精神のことについて少しお話したいと思います。

食事と精神でまず身近なことはストレスがかかったときに食欲、食事に影響が起きることです。タイトルにもした通り、ストレスがかかると食欲が低下し、食事も摂れなくなります。また、ストレスにより胃腸に不調をきたすことで食事ができないということもあるでしょう。うつ病の症状の一つに食欲低下、体重減少というものがあり、ストレス反応やうつの症状として食べられない、食欲がわかないということが生じます。

ただ、ストレス反応やうつの症状の場合、反対に食欲が亢進することもあります。いわゆる「やけ食い」と言われるような状態です。その結果、体重も増加します。したがって、食べられないだけでなく、食べ過ぎるということも生じる場合があります。

もう一つは、体重や体型が気になって食事が摂れないという状態です。これは摂食障害という病名で知られています。摂食障害には、ほとんど一切の食事をとらない拒食という状態と一度に大量の食事を摂る過食という状態があります。多くの場合はどちらも経験することが多いようです。病気の原因は明らかにはされていませんが、ダイエットをきっかに病気へと進展してしまうことがよくあります。食事制限によるダイエットをしていたら、いつの間にか通常の食事を摂ることが困難になり、食べない・食べ過ぎる、を繰り返してしまいます。

ストレスによるものか摂食障害といった病気によるものか、理由はなんであれ、私たちは食事が摂れず低栄養の状態が続くと共通した変化が生じてくることが知られています。昔、計画的に食事を制限し、体重を低下させ、どのような変化が生じるかを検討するという実験が行われました。その実験に参加したのは健康状態に問題のない成人男性でしたが、低栄養状態が続くことで様々な変化が生じました。

まず、食べ物への興味関心が高まる人が多数観察されたそうです。多くの人が一日中食べの物のことばかり考えるようになったと言われています。実験が終了したあとに、両輪人や栄養士など食べ物に関わる職業に転職した人も数名いたそうです。
次に、食事を摂ることのコントロールを失う人がたくさんいたそうです。いわゆる過食という状態で、実験を終える前に計画的に栄養状態をもとに戻す時期も設けられたそうですが、コントロールを失い、食べ過ぎてしまう人が多数いたと報告されています。

憂うつ、不安、イライラを報告する人が多数存在したことも報告されています。明らかなきっかけや理由はないが、落ち込んだり、イライラしたり、情緒的な変化を感じる人が多数だったそうです。この実験の結果から、栄養状態のバランスが崩れることは私たちの精神にも影響することが示されました。

このように、食べられない・食べないによって栄養状態が低下してしまうと、精神的にもネガティブな影響が生じてしまいます。もちろん、食べ過ぎてしまうことも注意が必要ですが、食べ物がおいしくなる季節、「食欲の秋」ということで、精神的な安定のためにも栄養を摂っている、と思いつつ、食べることを楽しんでもらうことも一つかと思います。

クリニックのロゴ札幌ことにメンタルクリニック

春名大輔

元気過ぎるのも要注意

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

夏期休診を終え、当クリニックも通常の診療を行っております。お盆も過ぎましたが、暑さがまだ続くようです。かと思えば、大雨となるなど不安定な天候が続いております。中々、元気が出ないと感じることもあるかしれません。

今日は「元気」について少し取り上げたいと思います。元気であること、徐々に元気になっていくこと、元気を取り戻していくこと、は一般の生活においても、精神科での治療の過程においても望ましい変化であることに間違いはありません。

しかしながら、「元気」には注意が必要な場合もあります。タイトルにも示したように元気すぎることも要注意になります。一般にもハイテンションというような表現があり、日常生活を送っていると、一時的にそのような体験をすることもあるものです。何か楽しい時間を過ごしている最中だけ、ハイテンションと感じることは自然な範疇と言えますが、そのような状態が続いたり、気分だけでなく、以下に紹介するような生活上の変化も続く時には注意が必要です。

・寝なくてもいける
時に徹夜するということは誰しも経験のあるものかと思いますが、これは「寝ることがもったいない」「寝なくても大丈夫」というような感覚を指します。そして、実際に寝ない日が数日続いたり、明らかに短い睡眠時間となったり、それでも日中の活動が可能というような状態です。

・(根拠はないけど)大丈夫!
私たちは自信が持てない、確信が持てないと感じるときに、自身を鼓舞するという目的で「大丈夫」と自分に言い聞かせたり、相手に安心してもらうために「大丈夫」と伝えたりすることがあります。また、経験や取り組んできた実績をもとに、「大丈夫」と思えることもあります。これらの「大丈夫」ではなく、何の根拠もないけれど、「大丈夫」と思えて仕方がない状態です。

・衝動買いが増える
買って後悔するという体験は誰しもにあるものかと思います。買ったのにそのままということもあるでしょう。このような体験のすべてが要注意ではありませんが、どうも最近、見たものをパッと買ってしまうことが増えている、課金が増えているなどお金を使う頻度が通常よりも明らかに増えている状態です。

上記以外にも、いつもよりも話過ぎてしまうようになる、考えが浮かんで浮かんで仕方ないといった状態が続いたりするときにも注意が必要な「元気」といえます。

過ぎたるは猶及ばざるが如し、という言葉があるように元気でることと、元気過ぎることは別なものと思っておくことが落ち着いて生活を送るヒントになるのではないかと思います。

睡眠リズムが取り戻しにくいと感じることはありませんか?

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

数年前から一般的にも良い睡眠を取ることへの注目が集まっております。数年前にはテレビなどで特集が組まれたり、デジタル機器によって睡眠を測定したり、睡眠を感知して起床に最適な時間にベッドが起こしてくれるなど、様々に進歩しております。

睡眠に関する様々な知識、研究がありますが、その中から今回は睡眠リズムを取り戻しにくくなってしまうことがあるというお話です。一部の精神疾患を経験すると、その後、乱れた
睡眠リズムを取り戻しにくくなってしまうと言われています。

私達が睡眠を取る理由の一つに概日リズムというものがあります。これは、一般的には体内時計とも言われているもので、地球の自転に合わせたリズムのことです。地球が1日に1回転することに合わせて、夜寝て、朝起きるというリズムが生じます。夜勤業務に携わっている方や夜更かしで昼夜逆転してしまうなどの睡眠リズムの混乱は主に概日リズムが混乱しているということになります。

また、この概日リズムを調整する機能が私達には備わっており、その調整機能により乱れたリズムを元に戻すことも行っています。なので、何かの理由で徹夜して翌日にたくさん寝ると、その後はまた元のリズムに戻るのは、この調整機能によるものです。もちろん、徹夜が繰り返されると調整機能が追いつかず、元に戻らなくなってしまうこともあります。また、そもそも私達の概日リズムは地球の自転と数分のズレがあると言われており、そのズレを食事や日中の活動によって微調整していると言われています。調整機能だけによって概日リムが調整されているわけではありません。しかしながら、私達が生活の事情でいつもとは異なる睡眠リズムになったとして、元のリズムに戻れるのは、この概日リズムの調整機能に拠るところが大きいのです。

この調整機能に影響を及ぼす精神疾患が双極性障害(躁うつ病)やうつ病と言われる疾患です。うつ病や双極性障害では、睡眠リズムの変化が症状の一つとなっています。治療により疾患の改善に伴い、睡眠リズムの変調も改善していきますし、睡眠の問題に対する治療によって睡眠リズムの変調そのものの改善も得られます。しかしながら、ある研究では、うつや双極性障害にかかってしまうと、病気が回復した後も概日リズムの調整機能の混乱が持続するといわれています。睡眠リズムの変調そのものが改善したとしても、調整機能の混乱は改善しないということです。

つまり、昔のように徹夜しても翌日たくさん寝れば元に戻せる、ということができなくなってしまうということになります。そこで、ある治療法では就寝と起床時間を一定にした生活をおくること治療かつ再発防止の一つとして組み込んでいます。

睡眠リズムと気分の変調はにわとりとたまごのような関係です。睡眠リズムを安定させることは気分の変調を予防することにも効果的です。概日リズムの混乱を防ぎながら質の良い睡眠を取ることはメンタルヘルスの向上、維持に有益と言えるでしょう。

7月も終わりを迎え、湿度、気温ともに高い日が徐々に増えています。寝苦しい夜も増えてしまいそうですが、できるだけ一定のリズムで睡眠を取るほうが、メンタルヘルスの維持には良いかもしれません。

広い場所が怖い、というわけではありません ~広場恐怖について~

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です。

本日は、「広場恐怖」という症状についてご紹介したいと思います。広場恐怖とは、強い不安に襲われたときに、どうにもできない、助けが得られないような状況や場所にいることが怖いという症状です。なので、広いかどうかは特に関係がなく、たとえ狭い空間であっても生じることがあります。

この症状は特にパニック障害と言われる疾患に同時に生じやすく、パニック発作が生じたときに、すぐにその場を離れられない、助けが得られないといった不安や恐怖によって、そのような状況や場所に強い恐怖を感じたり、避けてしまいます。

生じる場面は多岐に渡ります。よく耳にするのは公共交通機関です。電車や地下鉄やバスの利用に強い恐怖や苦痛を伴ったり、利用できない場合もあります。他には人混み、映画館、エレベーター、教室など大小さまざまな空間に生じます。

そして、そのような状況や場所に身を置くことになってしまったときには、共通して出入口付近にいるようにするといった反応がみられます。交通機関では出入り口付近に立つ、映画館でも出入口付近の席をとるなどの特徴がみられます。これは、強い不安や発作が生じたときにすぐに対応できると、少しでも安心できる材料を増やすためです。

このように様々な状況や場所に対して恐怖や苦痛を伴うため、症状が進行すると外出も難しくなってしまうこともあります。安心できる人と一緒なら外出できても、一人ではできないということも多くみられます。

治療では薬物療法が主となりますが、エクスポージャー(曝露)療法も有効です。先にも述べた通り、パニック障害という病気に同時に生じやすいため、パニック障害のエクスポージャーには広場恐怖への曝露も同時に行われていくことになります。例えば、地下鉄の入り口付近から挑戦し、徐々に入り口から離れ、中央付近でシートに座るといった課題にしていきます。さらに、利用者の少ない路線や時間帯から始め、より利用者の多い路線、時間帯へと段階的にハードルを上げていきます。そうすることで徐々に広場恐怖も克服していくことが可能です。

決して楽な治療法ではありませんが、治療効果が十分に期待できます。徐々に克服していけることは生活が送りやすくなっていくことに加えて、自分自身の力で乗り越えられたという自信もついていきます。時に、知らず知らずのうちに自分でエクスポージャーを実践されている方もいらっしゃいます。怖いと思っても、何とか挑戦し、乗り切れる体験は心理療法と同様のことを行っていると言えます。「実は、していたかも」にも積極的に気づけるようになるとよいでしょう。

じっとしていられない、つい人の邪魔をしちゃうは病気?

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

前回に引き続き、今回はADHDの多動・衝動について取り上げたいと思います。前回もお話させていたように、ADHDとは、発達障害の一つで、「不注意」と「多動、衝動」という特徴を持つ、先天的な疾患と考えられています。この十数年の間で、一般的にも知られるようになり、数年前からは大人の発達障害といった表現が用いれられ、メディアに取り上げられたり、書籍も多数出版されております。

多動、衝動の症状
・じっと座っていることが苦手だったり、同じ姿勢でじっとしていることが苦手
・不適切な状況や場面で、席を立ってしまったり、動き回る
・落ち着きがなく、何かに動かされているかのように活動する
・しゃべりすぎる
・質問が終わる前に話し初めてしまったり、相手の話が終わる前に話し初めてしまう
・順番を待てない
・忙しい人に声をかけて、相手の作業を中断させてしまう

多動の特徴はより小さい頃に目立ちやすいと言われています。幼少期(小学校入学以前)から落ち着きがない、じっとしていられない、とにかく活溌というような特徴がみられます。なので、一見すると元気な子供です。しかし、すぐにどこかに行ってしまい迷子になったり、飛び出して危ない目に遭遇しそうになったり、怪我もよくしてしまうなど、単に元気という表現では済まされないことが生じます。

小学生では低学年の時期には落ち着きのなさが引き続き目立ってしまうことが多いようです。授業中に立ち歩いてしまうといった場合もありますが、座っているけれど手や足をよく動かしてしまう、座る位置を頻繁に変えるといったこともあります。なので、入学式や始業式といったイベントで、じっとしていることを求められると、とても辛い思いをされます。

立ち歩く、動き回るといった大きな動きを伴う落ち着きのなさは、高学年ぐらいから落ち着いてくると言われます。なので、高学年から中学生以降はじっとしていられない、座位をよく変える、手や足がよく動くなど小さな動きの落ち着きのなさが主体となっていきます。そのため、日常生活では大きな支障とならずに経過する場合もよくみられます。

中学、高校、大学など成人に向かっていく過程では、しゃべりすぎる、思ったことをすぐに口にしてしまう、忙しくしている人の手を止めてしまう、といった特徴のほうが生活への支障が大きくなる場合があります。このような特徴がより強く出る人の場合だと、人間関係が上手くいかなくなるきっかけになってしまうからです。

成人期以降では、職場で席を頻回に立ってしまう、落ち着いて座位を保てないといった特徴がみられます。また、じっと座って作業をし続けるといった業務は苦痛に感じてしまうことが多いようです。家庭の中では、休みをゆっくりと過ごせないといった困難が生じることもあります。

不注意の特徴と同様に、多動・衝動の特徴もその時期だけに限らず一貫して持続するということもあります。また、何らかの工夫で特徴はあるのだけど、問題は生じていないという場合もあります。じっとしていられないからADHDということにも、もちろんなりません。幼少期からのエピソードを丁寧に聴取し、特徴の有無や生活への支障を総合的に判断して診断されます。

そのような判断の結果、ADHDという診断となれば、不注意の症状と同様にその後どのような治療を行っていくかを相談していきます。ADHDには治療薬があるので、薬物療法を行うかどうかといった検討を進めていくことになります。また、日常的な工夫を増やし、自身の特徴をどう補っていくか、ということも併せて考えていくことが基本的な治療方針となります。

じっとしているのが苦手、ついしゃべりすぎてしまって、つい忙しくしている人の手を止めてしまって等々、もしかするとそれはADHDの特徴かもしれません。医療機関への相談を検討してみるとよいかもしれません。