双極性感情障害と気分循環性障害 について

朝夕涼しくなってきましたが、まだまだ残暑が厳しい日がありますね^^;;

私達の心は、天気のように変わります。晴れる日もあれば、雲が広がる日もありますね。
ただ、その“気分の波”がとても大きくなり、暮らしや人間関係に負担がかかってしまう――その代表が双極性感情障害気分循環性障害です。どちらも珍しい病気ではありません。ゆっくり整えていくことで、日常は徐々に安定へ向かいます(*^^*)


病気の特徴をわかりやすく

双極性感情障害(いわゆる「躁うつ病」)

  • 双極Ⅰ型:強い躁状態(眠らなくても平気、多弁、浪費、衝動)とうつ状態を繰り返す

  • 双極Ⅱ型:軽い躁状態(軽躁)とうつ状態を繰り返し、とくに“うつ”の期間が長くなりがち

うつの時期にだけ受診すると、うつ病と誤解されることがあります。過去の“上がりすぎた時期”も一緒に振り返ることが診断の鍵です。

気分循環性障害

  • 2年以上、軽い抑うつと軽躁が続くタイプ

  • 「性格の問題」と見過ごされやすいけれど、実際は**“気分の波の病気”**

  • 日々の生活では「疲れやすい」「波に振り回される」と感じやすい


治療の考え方(薬物療法を含む)

治療の目標は「波をならし、予兆に早く気づける体制をつくること」。そのために薬物療法・心理社会的支援・生活リズムの調整を組み合わせます。内容は一人ひとりで調整しますが、概ね以下を参考にしてください^^

1) 薬物療法(ポイントだけ)

  • 気分安定薬:リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピン など
    → 波をならし、再発を抑える“土台”の薬です。

  • 非定型抗精神病薬:クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール、ルラシドン など
    → 躁状態やうつ症状に幅広く用います。

  • 抗うつ薬躁転(うつ→躁への切り替わり)のリスクがあるため、原則として気分安定薬と併用し慎重に使います。単剤は避けることが多いです。

  • 気分循環性障害:まずは生活リズムの整備と心理教育が基本。必要に応じて少量の気分安定薬や、睡眠を整える薬を検討します(漫然とした抗不安薬の長期使用は避けます)。

※妊娠・授乳中、肝腎機能の状態、他疾患や内服との相互作用などで選択は変わります。自己判断で中断・変更せず、必ず主治医と相談してくださいm(_ _)m

2) 心理社会的アプローチ

  • 心理教育:病気の理解を深め、波の“前ぶれ”に気づく力をつける

  • 認知行動療法(CBT):考え方の“クセ”に気づき、行動を少しずつ整える

  • 対人関係・社会リズム療法(IPSRT):人間関係と睡眠・起床・食事などの「体内時計」を安定させる

  • 家族支援:周囲が病気の特性を知ることで、責め合いを減らし、早期受診に繋げる

3) 生活リズムの工夫(今日からできること)

  • 睡眠を最優先:就寝・起床を毎日ほぼ同じ時刻に。昼寝は短めに。

  • 刺激物のコントロール:アルコールや過剰なカフェインは波を大きくしやすい

  • 運動と栄養:軽めの有酸素運動+バランスの良い食事

  • セルフモニタリング:睡眠時間、買い物・ネット注文の増加、予定の入れすぎ等を“予兆”として記録


よくある不安に、ひとつずつ

  • 「薬を続けるのが不安」
    → 量や種類は段階的に最適化できます。副作用は我慢ではなく、医師と都度相談で調整。

  • 「うつの期間が長くて先が見えない」
    → 双極Ⅱ型や気分循環性障害では珍しくありません。焦らず“波をならす”戦略で進みましょう。

  • 「家族にどう伝える?」
    → 病気の説明用リーフレットや、受診同伴を活用。責めない・決めつけない関わりが最大の支えです。


まとめ ― 焦らず、でも確実に

双極性感情障害や気分循環性障害は、気分の波が大きくなる先天的な体質が背景にあります。けれど、
①適切な薬の土台②心理教育と周囲の理解③生活リズムの安定――この三本柱で、波は確実に穏やかになります(*^_^*)

もし「気分の波に振り回されている」と感じたら、ひとりで抱え込まずご相談ください^^

P.S 本日は、琴似神社のお祭りでたくさん露店がでており、たくさんの方がお祭りに参加されています^^ 私も参拝に行って、ついでに、露店めぐりを楽しんできます(^_^)

札幌 精神科 心療内科 琴似

双極性感情障害(躁うつ病)について③

双極性感情障害は、治療を中断すると、再発しやすい疾患です。

治療を怠っていると、再発を繰り返します。繰り返すたびに、調子のよい時期(寛解期)が短くなってきます。徐々に間隔が短くなると、最後は急速交代型(ラピッドサイクラー)といわれる1年のうちに4回以上、躁状態とうつ状態を繰り返すまでに悪化していきます。そうなると、日常生活が成立しなくなります。

最後には、仕事・家族・社会的信用・友人・財産・生命など、大切なものを失ってしまう可能性もあります。

【治療のポイント2】

●まず、早期発見 早期治療が重要です。

●自身の疾患を受け入れて、正しい治療法を理解した上で、治療を開始することが、何より大切となります。

●治療を開始して、症状が一旦、落ち着いてきたからといって、服薬を中止したり、薬の量を自己調整したりすると再発の危険が高まります。処方された薬をきちんと服用しましょう。飲み忘れにも注意してください。副作用が気になる場合は遠慮なく主治医に相談することをお勧めします。

●規則正しい生活をしましょう。過労や睡眠不足などは再発するきっかけとなり得ます。

●自分一人では、治療を継続していくのが困難な場合もあります。ご家族や職場の上司や仲間にも、双極性障害について理解してもらい、薬の飲み忘れを指摘してもらったり、再発のサインがあれば注意してもらえる環境を整えることも大切です。

●高血圧症や糖尿病の治療と同様に、双極性感情障害の治療でも服薬の継続がとても重要となります。

 

しっかりと治療を継続し、周囲からのサポートや協力を得て、無理なくマイペースで過ごすことによって、安定して生活を送ることができるようになります。

以上、双極性感情障害について、お話いたしました。

最後まで、聞いてくださり、ありがとうございました(*^^*)

札幌 西区 琴似 二十四軒

心療内科 精神科

院長 阿部 多樹夫

双極性感情障害(躁うつ病)について②

前回、双極性感情障害について

(1)双極性感情障害とうつ病の違い

(2)双極性感情障害には、Ⅰ型とⅡ型があることをご説明しました。

うつ病と双極性感情障害は、しっかりと区別する必要があります。何故なら、治療法が全く違ってくるからです。

 

【治療のポイント】うつ病の患者さんには、抗うつ薬を中心とした薬物療法を行いますが、双極性感情障害の方に抗うつ薬を処方することは非常に慎重を期する必要があります。それは、抗うつ薬を使用すると躁転(うつ状態から躁状態に急に転じること)する場合が多々あるからです。

そのため、双極性感情障害の治療の第一選択薬として、バルプロ酸ナトリウム 炭酸リチウム カルバマゼピン ラモトリギンなど気分安定薬を処方することが一般的です。

●躁症状が強い場合には、必要によって抗精神病薬を併用する場合があります。

●うつ症状が強い場合は、先ほど申し上げましたように躁転に気を付けて、慎重に少量の抗うつ薬の使用をすることが一派的でしたが、現在では、躁転しないセロクエル徐放剤やルラシドンを使う場合も増えてきました。

●躁うつ病相のどちらでも共通する症状として不眠が挙げられます。そのため、不眠の治療も同時に行うことが必要です。

●うつ病の症状で初診された患者さんの中で、実は双極性感情障害だったケースが15%程度あると言われてます。的確な診断のために、過去に躁状態を呈したことがある場合は、主治医にその旨を、必ずお伝えください。それだけで、非常に参考になります。

それでは、次回、最終の3回目に続きます(*^^*)

 

P.S.本日から、札幌市内も雪が本格的に積もって参りました^^

路面が滑りやすくなっておりますので、転倒して怪我などされないようにお気をつけ下さい(*^_^*)

札幌市西区 琴似 二十四軒

心療内科 精神科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫

 

 

 

 

 

双極性感情障害(躁うつ病)について①

今回は、双極性感情障害(躁うつ病:以下 双極性感情障害とのみ記載について全部で3回に分けて、お話させていただきたいと思います。

双極性感情障害は文字通り、気分が高くなった状態である「躁」と気分が沈んでしまった状態である「うつ」を繰り返す脳の疾患です。性格や心理的な問題でなるのではありません。

双極性感情障害は人口の1%くらいにみられ、男女差はありません。誰にでも起こりえる疾患です。

うつ病はうつ症状(気分の沈み 意欲低下 疲れやすい 不眠 死にたい気持ちになる等)のみが出現します。

双極性感情障害では躁症状(気分が高まって、元気が出てくる 何でもできると自信に満ち溢れてくる おしゃべりになる 寝なくても平気になる 怒りっぽく攻撃的になる等)とうつ症状の両方を繰り返し認めることが特徴となります。場合によっては、躁症状とうつ症状が交じり合った躁うつ混合状態となることもあります。

 

 

双極性感情障害には、日常生活に支障が生じる強い躁状態とうつ状態がみられる双極Ⅰ型と、日常生活には支障が生じない軽度な躁状態(軽躁状態)とうつ状態がみられる双極Ⅱ型があります。

 

今回は、ここまでとさせていただきます。

次回は、双極性感情障害の2回目を、お話させていただきます。

札幌市西区 琴似 二十四軒

心療内科 精神科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫