公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です
数年前から一般的にも良い睡眠を取ることへの注目が集まっております。数年前にはテレビなどで特集が組まれたり、デジタル機器によって睡眠を測定したり、睡眠を感知して起床に最適な時間にベッドが起こしてくれるなど、様々に進歩しております。
睡眠に関する様々な知識、研究がありますが、その中から今回は睡眠リズムを取り戻しにくくなってしまうことがあるというお話です。一部の精神疾患を経験すると、その後、乱れた
睡眠リズムを取り戻しにくくなってしまうと言われています。
私達が睡眠を取る理由の一つに概日リズムというものがあります。これは、一般的には体内時計とも言われているもので、地球の自転に合わせたリズムのことです。地球が1日に1回転することに合わせて、夜寝て、朝起きるというリズムが生じます。夜勤業務に携わっている方や夜更かしで昼夜逆転してしまうなどの睡眠リズムの混乱は主に概日リズムが混乱しているということになります。
また、この概日リズムを調整する機能が私達には備わっており、その調整機能により乱れたリズムを元に戻すことも行っています。なので、何かの理由で徹夜して翌日にたくさん寝ると、その後はまた元のリズムに戻るのは、この調整機能によるものです。もちろん、徹夜が繰り返されると調整機能が追いつかず、元に戻らなくなってしまうこともあります。また、そもそも私達の概日リズムは地球の自転と数分のズレがあると言われており、そのズレを食事や日中の活動によって微調整していると言われています。調整機能だけによって概日リムが調整されているわけではありません。しかしながら、私達が生活の事情でいつもとは異なる睡眠リズムになったとして、元のリズムに戻れるのは、この概日リズムの調整機能に拠るところが大きいのです。
この調整機能に影響を及ぼす精神疾患が双極性障害(躁うつ病)やうつ病と言われる疾患です。うつ病や双極性障害では、睡眠リズムの変化が症状の一つとなっています。治療により疾患の改善に伴い、睡眠リズムの変調も改善していきますし、睡眠の問題に対する治療によって睡眠リズムの変調そのものの改善も得られます。しかしながら、ある研究では、うつや双極性障害にかかってしまうと、病気が回復した後も概日リズムの調整機能の混乱が持続するといわれています。睡眠リズムの変調そのものが改善したとしても、調整機能の混乱は改善しないということです。
つまり、昔のように徹夜しても翌日たくさん寝れば元に戻せる、ということができなくなってしまうということになります。そこで、ある治療法では就寝と起床時間を一定にした生活をおくること治療かつ再発防止の一つとして組み込んでいます。
睡眠リズムと気分の変調はにわとりとたまごのような関係です。睡眠リズムを安定させることは気分の変調を予防することにも効果的です。概日リズムの混乱を防ぎながら質の良い睡眠を取ることはメンタルヘルスの向上、維持に有益と言えるでしょう。
7月も終わりを迎え、湿度、気温ともに高い日が徐々に増えています。寝苦しい夜も増えてしまいそうですが、できるだけ一定のリズムで睡眠を取るほうが、メンタルヘルスの維持には良いかもしれません。