公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です。
本日は、「広場恐怖」という症状についてご紹介したいと思います。広場恐怖とは、強い不安に襲われたときに、どうにもできない、助けが得られないような状況や場所にいることが怖いという症状です。なので、広いかどうかは特に関係がなく、たとえ狭い空間であっても生じることがあります。
この症状は特にパニック障害と言われる疾患に同時に生じやすく、パニック発作が生じたときに、すぐにその場を離れられない、助けが得られないといった不安や恐怖によって、そのような状況や場所に強い恐怖を感じたり、避けてしまいます。
生じる場面は多岐に渡ります。よく耳にするのは公共交通機関です。電車や地下鉄やバスの利用に強い恐怖や苦痛を伴ったり、利用できない場合もあります。他には人混み、映画館、エレベーター、教室など大小さまざまな空間に生じます。
そして、そのような状況や場所に身を置くことになってしまったときには、共通して出入口付近にいるようにするといった反応がみられます。交通機関では出入り口付近に立つ、映画館でも出入口付近の席をとるなどの特徴がみられます。これは、強い不安や発作が生じたときにすぐに対応できると、少しでも安心できる材料を増やすためです。
このように様々な状況や場所に対して恐怖や苦痛を伴うため、症状が進行すると外出も難しくなってしまうこともあります。安心できる人と一緒なら外出できても、一人ではできないということも多くみられます。
治療では薬物療法が主となりますが、エクスポージャー(曝露)療法も有効です。先にも述べた通り、パニック障害という病気に同時に生じやすいため、パニック障害のエクスポージャーには広場恐怖への曝露も同時に行われていくことになります。例えば、地下鉄の入り口付近から挑戦し、徐々に入り口から離れ、中央付近でシートに座るといった課題にしていきます。さらに、利用者の少ない路線や時間帯から始め、より利用者の多い路線、時間帯へと段階的にハードルを上げていきます。そうすることで徐々に広場恐怖も克服していくことが可能です。
決して楽な治療法ではありませんが、治療効果が十分に期待できます。徐々に克服していけることは生活が送りやすくなっていくことに加えて、自分自身の力で乗り越えられたという自信もついていきます。時に、知らず知らずのうちに自分でエクスポージャーを実践されている方もいらっしゃいます。怖いと思っても、何とか挑戦し、乗り切れる体験は心理療法と同様のことを行っていると言えます。「実は、していたかも」にも積極的に気づけるようになるとよいでしょう。