じっとしていられない、つい人の邪魔をしちゃうは病気?

公認心理師、臨床心理士、事務長の春名です

前回に引き続き、今回はADHDの多動・衝動について取り上げたいと思います。前回もお話させていたように、ADHDとは、発達障害の一つで、「不注意」と「多動、衝動」という特徴を持つ、先天的な疾患と考えられています。この十数年の間で、一般的にも知られるようになり、数年前からは大人の発達障害といった表現が用いれられ、メディアに取り上げられたり、書籍も多数出版されております。

多動、衝動の症状
・じっと座っていることが苦手だったり、同じ姿勢でじっとしていることが苦手
・不適切な状況や場面で、席を立ってしまったり、動き回る
・落ち着きがなく、何かに動かされているかのように活動する
・しゃべりすぎる
・質問が終わる前に話し初めてしまったり、相手の話が終わる前に話し初めてしまう
・順番を待てない
・忙しい人に声をかけて、相手の作業を中断させてしまう

多動の特徴はより小さい頃に目立ちやすいと言われています。幼少期(小学校入学以前)から落ち着きがない、じっとしていられない、とにかく活溌というような特徴がみられます。なので、一見すると元気な子供です。しかし、すぐにどこかに行ってしまい迷子になったり、飛び出して危ない目に遭遇しそうになったり、怪我もよくしてしまうなど、単に元気という表現では済まされないことが生じます。

小学生では低学年の時期には落ち着きのなさが引き続き目立ってしまうことが多いようです。授業中に立ち歩いてしまうといった場合もありますが、座っているけれど手や足をよく動かしてしまう、座る位置を頻繁に変えるといったこともあります。なので、入学式や始業式といったイベントで、じっとしていることを求められると、とても辛い思いをされます。

立ち歩く、動き回るといった大きな動きを伴う落ち着きのなさは、高学年ぐらいから落ち着いてくると言われます。なので、高学年から中学生以降はじっとしていられない、座位をよく変える、手や足がよく動くなど小さな動きの落ち着きのなさが主体となっていきます。そのため、日常生活では大きな支障とならずに経過する場合もよくみられます。

中学、高校、大学など成人に向かっていく過程では、しゃべりすぎる、思ったことをすぐに口にしてしまう、忙しくしている人の手を止めてしまう、といった特徴のほうが生活への支障が大きくなる場合があります。このような特徴がより強く出る人の場合だと、人間関係が上手くいかなくなるきっかけになってしまうからです。

成人期以降では、職場で席を頻回に立ってしまう、落ち着いて座位を保てないといった特徴がみられます。また、じっと座って作業をし続けるといった業務は苦痛に感じてしまうことが多いようです。家庭の中では、休みをゆっくりと過ごせないといった困難が生じることもあります。

不注意の特徴と同様に、多動・衝動の特徴もその時期だけに限らず一貫して持続するということもあります。また、何らかの工夫で特徴はあるのだけど、問題は生じていないという場合もあります。じっとしていられないからADHDということにも、もちろんなりません。幼少期からのエピソードを丁寧に聴取し、特徴の有無や生活への支障を総合的に判断して診断されます。

そのような判断の結果、ADHDという診断となれば、不注意の症状と同様にその後どのような治療を行っていくかを相談していきます。ADHDには治療薬があるので、薬物療法を行うかどうかといった検討を進めていくことになります。また、日常的な工夫を増やし、自身の特徴をどう補っていくか、ということも併せて考えていくことが基本的な治療方針となります。

じっとしているのが苦手、ついしゃべりすぎてしまって、つい忙しくしている人の手を止めてしまって等々、もしかするとそれはADHDの特徴かもしれません。医療機関への相談を検討してみるとよいかもしれません。