尊厳死・安楽死問題について精神科医としての立場から。

最近、ALS(筋委縮性側索硬化症)患者さんの嘱託殺人に関与した2名の医師のことが問題となり連日報道されております。今回は安楽死・尊厳死というテーマでお話させていただきます。

まず【尊厳死】とは「治療法もなく回復が望めない重篤な疾患(不治の病)になった場合に、患者さんご自身で事前にリビングウィルという延命措置を行わない意志確認書を作成します。その上で、十分な緩和ケアは受けながらも、余計な延命治療を行わず、自信の尊厳を守るために自然死を迎えること」を言います。ほとんどの場合、合法と考えられておりますが、実は、法的に明確な根拠はなく、厳密にいえばグレーゾーンです。

一方【安楽死】とは「不治の病になった場合に、その後、必ず訪れる様々な苦痛を回避するため、苦しまずに死ねるように他者に手伝ってもらう不自然死」を言います。具体的な方法としては、麻酔や睡眠導入剤の投薬を行い意識がなくなった上で、致死性の薬物を投与する方法が一般的です。この場合、日本では嘱託殺人という明確な犯罪行為になります。海外では、オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・カナダ・スイス・アメリカの一部の州では合法とされています。

私も大学病院や総合病院に勤務していた時期にALS(筋萎縮性側索硬化症)という非情に苦痛を伴う疾患になられた患者さんの精神科コンサルテーションリエゾンとして何名か担当させていただいた経験があります。そのため、ご本人やご家族の並大抵ではない苦しみは十分に理解できます。

「心の緩和ケア」に関わるに当たって、少しでも患者さんの気持ちが和んでもらえればと懸命に考えておりますが、私個人の感想ですが「精神科医はほとんど何もお手伝いできない。何もして差し上げられない」という、やるせない無力感と罪悪感に苛まれた苦い記憶が非常に多く残っております。。

しかし今回の事件では、安楽死に加担した医師が報酬として金銭を受け取り、主治医でもないのに面会を装って行った行為です。私個人的には非常に遺憾に思います。。

「尊厳死」「安楽死」は、個人ではなく国がしっかりと明確な基準を示すべき問題だと思います。

P.S.今回は重い話になってしまい申し訳ありませんでしたが、今日もそうでしたが、明日も真夏の快晴になりそうです^^ 北国の短い夏を十分に楽しんで下さいませ(*^-^*)

札幌 西区 琴似

心療内科 精神科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫