院長独り言 ㉖ 中村哲医師への想い

TVでも、放送されていましたが、アフガニスタンで永年、医療や土木事業に携わってこられた中村哲医師が、今月の4日に何者かに襲撃されて、命を落とされました。

面識は全くありませんでしたが、10年前くらいに本を読んで、ご活躍されていた内容は知っておりました。

中村医師は、長引く戦禍と干ばつによって荒廃しきったアフガニスタンへの医療の必要性を痛感されていました。しかし、それ以前に、完全な砂漠地帯に住む人々に一滴の水もないのが、何よりの問題だと考えておられました。

まず水の確保が必要。「100の診療所より1本の用水路を」と考えて、自身でツルハシやスコップ、ショベルカーを操って広大な用水路の建設に、文字通り人生を懸けて着手しました。最初は、現地の住民も半信半疑でしたが、泥まみれになりながら、朝から晩まで率先して働く中村医師の姿勢に、次第に心動かされて、協力する人が多くなっていったようです。

その結果、総延長20km以上に及ぶ、用水路が完成して、不毛の砂漠が肥沃な農地として甦ったことは、永年の戦争で傷ついた多くの人々の心に、希望と誇りと生活の糧を取り戻しました。

強い信念と徹底した利他的精神なしでは、とても成しえないことだと思います。

今回の件では現地で、長い間、一緒に頑張ってこられた住民の方やNGO(非政府組織)の方々が受けられた衝撃は計り知れないと思います。

少し話はズレますが、精神科医は陰性感情も陽性感情も全てコントロールするべく研修医の頃から訓練を受けています。私も然りです。感情に左右されず、冷静な中立な精神性が求められます。

しかし今回の件に関しては、人(感情)として申し上げたいです。

あまりにも理不尽に至極の命を奪われたことに対して、激しい憤りと悲しみを禁じえません。本当に悔しくてしょうがありません。

遠い異国のアフガニスタンで、利他的精神の元に人々のために、人生を捧げた誇り高い武士道精神を持った偉大な日本人医師が、おられたことを私は一生忘れたくないと心から思いました。

札幌 西区 琴似 二十四軒

心療内科 精神科

札幌ことにメンタルクリニック

院長 阿部 多樹夫