もの忘れ 認知症について⑩

今回はFTLD(前頭側頭葉変性症 ≒FTD:前頭側頭型認知症)についてお話させていただきます。厳密にはFTLDとFTDはちょっとだけ違いますが、ほとんど同じものと考えてください^^;

FTLDは分かりやすく言うと、前頭葉と側頭葉が主に委縮するタイプの認知症です。特徴として認知機能障害が出現する前から、人格変化や反社会的行為 常同性の亢進が出現します。場合によっては失語症や意味性記憶障害などの症状も、みられます。次第に認知機能も低下してきて、最後は記憶障害も顕著となってきます。下記の画像1をご覧ください。

画像1

赤丸と黄色矢印の部位の前頭葉と側頭葉が主に萎縮していることが、ご理解いただけると思います。

症状として下記が挙げられます。

●人格変化:文字通り、人が変わってしまったようになり、他者への配慮や共感がなくなってきます。身だしなみにも気を使わなくなり、風呂にも入らず 服が汚れていても気にしなくなります。

●反社会的行為・脱抑制的行動:万引きや信号無視など社会のルールを守れなくなります。順番待ちに平気で割込んだりします。本人に悪いという認識が全くないことも特徴です。

●常同性亢進:同じ行動パターンをとるようになります。些細な動作から日常生活全般にいたるまで、パターン化した行動をとるようになります。極端な場合は、起床時間から歯磨き 朝食時間 散歩コース 昼食 TVを見る時間・番組など昼寝の時間や夕食、そして就寝時間も画一的になります。 時刻表通りの生活パターンをとることもあります。また食事の嗜好性も変化してきます。特に甘辛味が好きになることが多く、同じものばかり好んで食べるようになります。

●意味性記憶障害(意味性認知症):意味そのものが理解できなくなります。たとえば、スプーンを示して、これは何ですか?と質問しても、スプーン自体の意味が分からなくなります。「ヒントはスプ・・」とまでヒントを与えても「スプ?スプら? わかりません」となります。金閣寺や富士山の写真を見ても寺や山であることは理解できますが、特定の名前がわからなくなります。

●進行性非流暢性失語症:徐々に日本語の滑らかな発音や発語が、できなくなってきます。分かりやすく言うと、外国の方が話す日本語のように発音が悪くなってきます(プロソディー障害と言います)。

治療は、非薬物療法として環境調整やケアを行うことが重要です。薬物療法としては、メマンチンという抗認知症薬や抗精神病薬、抗てんかん薬等を使用することがあります。

FTLDは対応が非常に難しいので、ご本人やご家族だけで抱え込まず、医療機関や区役所、地域包括支援センターなどに相談窓口がありますので、ご相談されることをお勧めしております。

まだまだ、お話したいことが山ほどありますが、一応、今回で認知症については終了とさせていただきます。次回は、全般性不安障害についてお話したいと思います^^

寒くなってきましたので、風邪など引かれませんようにお自愛ください^^/

札幌 西区 琴似 二十四軒

心療内科 精神科

認知症 もの忘れ外来

院長 阿部 多樹夫